ある地方の刀鍛冶が、よそから来た来訪者に語る昔話です。刀鍛冶は自分のことを鬼の末裔だと言い出しますが…。

とある美術館の学芸員さんが話してくれた仮説をお借りして脚色しました。
なかなかおもしろい話だなと思ったのですが、裏付けは詳しくとってないのでファンタジーってことで。

私の作品ってなんか加齢臭がすごいなあ…。
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pakutaso.com, photo by すしぱく, model by まーこ / 滝沢洞風

【一人声劇】鬼の昔語り

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/* アレンジアドリブ歓迎。詳細はアクターノートを御覧ください。
/* 【設定】
/* とある寂れた山里で黙々と刀を打つ鍛冶師。彼（彼女）は来訪者に、自分が鬼の末裔だと言い出します。
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/* 【場所】　山の中にある鍛冶場や庵など。
/* 【登場人物】
/* 刀鍛冶（語り手）…性別不問。大人。年齢の上限なし。
/* 来訪者（聞き手）…性別不問。大人。年齢は一人旅が出来る程度で想定してください。
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ここは昔、鬼の住む場所であったのをご|存知《ぞんじ》ですか。


我らはその鬼の|末裔《まつえい》にございますよ。信じる信じないは、ご自由に。


ここには昔から、鉱山がございました。金と銀ばかりか、良質な鉄が豊富に取れた豊かな山でした。でも、時の朝廷がそれを欲しがった。生まれ育った土地を愛する祖先たちは、服従を良しとせずに、朝廷に抵抗しました。


|豊後《ぶんご》の民が|土蜘蛛《つちぐも》と呼ばれて|蔑《さげす》まれたように、我らの祖先は鬼と呼ばれて、都から討伐される立場になりました。


それが「鬼退治」です。


もちろん祖先達は懸命に戦いましたが、相手は都の軍勢だ。彼らは大軍勢に草でも払うかのように蹴散らされ、仲間は殺されるか奴隷となり、鉱山も奪われてしまいました。


刀を作る技を持っていた男達は捕らえられ、|囚人《めしうど》として都へと連れ去られたのです。


英雄が鬼退治をして、宝を持ち帰る。ええ、昔語りの通りです。


連れ去られた男たちはその後、都で必死に刀を造りました。それは囚人である彼らにとって、唯一生き残る手段でした。


優れた刀を造り、そこに名を刻んで初めて、彼らは名もなき囚人から、名前のある何かに戻ることができたのです。


やがて時が経ち、あの時の朝廷もたおされて、今はもうありません。残されたのは、鉄をとり尽くされた|空《から》の鉱山と、何振りかの名刀と呼ばれる刀だけ……。このすっかり|寂《さび》れた里に、興味を持つ者ももはやおりません。


私は時折思うのですよ。我らは、我が一族は、本当に負けたのだろうかと。……わかっていますよ、答えなどというものはないのでしょう。


我らはひたすら、祖先に|倣《なら》い、ここでこうして刀を作っているのです。なまくらには名前を刻めない。名を刻むにふさわしい刀を生み出すまでね。


それが我ら、鬼の生きた|証《あかし》になるのですから。


刀鍛冶の話

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