十年ぶりで、親友が訪ねてきた。月の明るい晩だった。お互いに十年分の年をとっているはずだが、向きあってみると、昨日別れたばかりのような気がした。自分の狂気を閉じ込めた缶詰を、預かってくれと彼は言う。「お前が持っていてくれ。俺は恐ろしい。これを預けることができる人間は、お前しかいないんだ」小説ブログ「ハナウタノベルズ」より転載。転載にあたり改稿しました。2012.05.25初稿 2016.03.25改稿